銀 河 鉄 道
 ジェイド・カーティスは動く箱に乗っていた。
 バチカルの空を走る天空客車ではない。陸上を走る、音素ではない別の力で動く箱だ。黒い煙を吐き出して、敷かれた線路の上を、耳障りな音と共に車輪が走る。
 決して乗り心地はいいとは言えない。コンパートメントそのものが狭く、また、ガタガタと荒く揺れるので、長く乗っていると尻が痛くなりそうだった。しかし、窓の外を通り過ぎていく風景は、陸上艦の上から眺めるのとはまた違った趣で、興味深いものだと言えた。
 最初にこれを――これを動かす仕組みを考案したのは、彼がかつて、一年にも満たない、長いとも短いとも言いがたい不思議な旅をしていた頃の、奇妙な同行者のひとりだった。わが子として、親友として、それまでの自分の生存理由の全てを捨てていとおしんできた子供が二度と還らないと知ったときに、彼は故国たるマルクトを離れ、音機関の街に移り住んで、新しい交通機関の発明に没頭した。
 正直に言って、彼にそういった方面の才能があるとは思えなかった。だが、それでもこのように実用化されているのだから、それなりに優秀だったのだろう。
 その彼は二年前に死んだ。喧嘩の仲裁をして、はずみで代わりに刺されるという、何とも彼らしい死に方だった。
 彼自身の遺言で、亡骸はあの渓谷に葬られた。レプリカとはいえ、故郷であるホドが見渡せるから、と淡々と綴られた文面の裏にあるもうひとつの理由を知っているのは、本当に一握りの人間に過ぎない。
 流れていく風景。その上の空をかつて自分たちは飛んだのだと、その思い出を共有できる人間も、半分に減ってしまった。ジェイド自身には思い出をいとおしむ習慣などこれっぽちもなかったが、それでも同行者達の中で一番、いや正確には二番目に幼かったあの少女が死んだときには、奇妙な喪失感に襲われた。
 あの中の誰一人、誰も怨まず、また怨まれずに生きてきた人間などいない。少女だった女の葬儀の日、ユリアシティを統べる女は、これは私の死体でもあるのよ、と小さく呟いた。遺体が発見されたとき、手足をさんざんに切り裂かれた女の無惨な死体の上に乱暴に貼り付けてあった紙には、預言を詠まず世界を救わないローレライ教団への恨みつらみが幾つも幾つも並べ立てられていた。
 ジェイドも女も、そしてもう一人生き残ったキムラスカの女王も、いつそのようになってもおかしくはなかった。ジェイド自身も、それだけの、いやそれ以上に酷いことをしてきた自覚はあった。そして殺された女にも、その覚悟はあっただろう。だからジェイドは同情はしなかった。その代わりに教団より先に犯人達を捕まえ、生きているのを後悔させるほどの拷問にかけた。冷酷な死霊使い、と何度も何度も非難されたが、いつしかその囁きすらも聞こえなくなった。
 親友である皇帝すらもそれを止めることはできなかった。眉を顰め、顔をしかめ、苦言を呈したが、ジェイドのほうが聞く耳を持っていなかった。
 何故ならこの殺人はジェイドの中では、純然たる『彼』への冒涜行為だったからだ。そして、ジェイド自身への弾劾でもあった。だからジェイドは復讐した。そしてそのことを後悔してはいない。
 『彼』がこんなことを望むと思うのか、と皇帝に言われたときに、ジェイドはこう答えた。
「わかりません。何故なら彼は、もう死んでしまったからです。死者の意思を勝手に推量するのは、即ち死者への冒涜です」
 数日後、ジェイドは退役届を出した。それは速やかに受理され、かくしてジェイドは軍属ではなくなった。
 自分はおかしくなってしまったということを、今やジェイドは正確に理解していた。もともと少し人間離れはしていたが、それが完全に人の範疇から外れてしまったことを知っていた。
 しかし軍から離れたからと言って、死霊使いに行ける場所などどこにもなかった。そして行きたい場所もどこにもなかった。生きたい場所などどこにもなかった。
 だからジェイドは列車に乗った。路銀の心配をする必要はなかったから、線路の果てまで行こうと思って、一番高い切符を買った。
 ジェイドは一つ小さな溜息をついた。狭いコンパートメントの中には、ジェイド以外誰もいない。死霊使いの名が売れすぎているせいか、それとも乗客が単に少ないだけなのかはわからなかったが、今は他人とあまり関わりたくない気分なのでちょうど良かった。
 窓の外に見える世界では既に日が沈みかけ、代わりに夜のヴェールを纏おうとしていた。群青色の空が、世界を侵食し始めている。



 いつの間にか眠ってしまっていたようだった。あたりはすっかり暗くなり、車内を黄色い安っぽい光が明々と照らしていた。
 ジェイドはふと、向かい合った座席に、いつの間にか座っている人間が居ることに気がついた。コンパートメントのドアが開いた音がしなかったが、それほどまでに深く眠っていたのだろうか。そして相手の足元を見て、妙な既視感を覚えた。胸騒ぎを感じ、少しずつ視線を上げていく。
 黒い靴。だぼついた黒いズボンに、胸部までを覆う同色のシャツ。その下には、割れた腹筋が露になっている。白い、二つの釦がかみ合わせるようにつけられた、特徴的なデザインの、半そでの上着。
 すらりとした少年らしいラインの首筋から頤まで見て、ジェイドはまさか、とつぶやいた。ジェイドの視線の先で、相手の喉仏が上下する。
「ジェイド、どうしたんだ?」
 ジェイドは絶望的な気分になって、青年の顔を見つめた。柔らかな色をしたみどりいろの瞳が、優しげにジェイドを見つめている。
「…、ルーク」
「うん?」
 呟いた名前に、青年は微笑んだ。ジェイドは、再び青年の名前を呼んだ。
「ルーク」
「ああ」
「ルーク」
「うん」
「ルーク」
「…だから、どうしたんだよ、ジェイド」
 いささかうんざりしたような声音で、ルークはジェイドの名前を呼んだ。ジェイドは曖昧に笑って、それから窓の外を見た。黒い窓には、彼と旅をしていた頃の自分の顔が映っていて、ジェイドはこれが夢なのだと理解した。
 彼はもう一度ルークのほうを見た。ルークは不思議そうな顔で、ジェイドの謎の行動をじっと見つめていた。ジェイドはひさしぶりに、自然に口角を上げた。
「そんなにじっと見つめられると照れますねえ」
「あ、ごめん」
 ルークはばつの悪そうな表情になった。それは記憶の中の彼と寸分違わぬ仕草だったので、ジェイドはそれだけで泣きたくなった。しかし仲間が死んでなお乾いたままだった眼球からは当然涙が出るはずもなく、代わりにジェイドはいつもの曖昧な笑みを浮かべて、それからふと気がついたように言った。
「ルーク。あなたはどうして、こんなところにいるのですか?」
 ルークはきょとんとして、それから首をかしげた。
「あれ? …そういえば、何でだろ?」
 心底不思議そうにしているので、これが夢だとわかっていながら、ジェイドは仕方ない子ですねえと、少し嫌味な調子を混ぜて心の底から言ってやった。するとルークは途端にむっとしたような顔になって、お前に言われたかねーよと言い返した。まるで、何も知らない筈の彼が、今のジェイドの状況を理解しているかのように思って、ジェイドは表に出さないながらも少しだけぎょっとした。
「何を言っているんですか?」
 しかしそれきりルークは黙り込んでしまった。それは卑怯だ、とジェイドは思ったが、相手が黙っている以上自分から何かを言い出すことも出来ずに、仕方なく溜息をついた。
「あ、ジェイド、あれ何だろう」
 しばらくして、ずっと窓の外を見ていたルークが、突然声を上げた。子供のようにはしゃぐ彼の指先を追うと、ちいさな青と黄色の光が、互いを追いかけるように、美しい円軌道を描いていた。
 ふと視線の向きを変えると、汽車が辿っているのは鉄ではなく、透明な、氷のように輝く水晶のレールの上だということに気がついた。それは今や一面に広がる星の海に、一本の鮮やかな線を、どこまでもどこまでも描いているようだった。ここは宇宙だったのだ。
「ならばあれはアルビレオ、でしょうか」
「アルビレオ?」
「星の名前ですよ」
 ジェイドの答えに、ルークはふうん、と頷いた。
「どうしてあんなふうにくるくるまわってるんだ?」
「二つの星がお互いの引力で引き合って、共通の重心を軸にして公転しているからです」
 ああいうのを連星と言うんです、そう説明すると、ふうん、とルークは頷いて、今や通り過ぎようとしていく星の明かりを目で追いかけながら尋ねた。
「お互いに引き合うのに、何でくっついちまったりしないんだ」
 それはただ何となく訊いてみただけに過ぎない、他愛の無い質問だと、ジェイド自身にもわかっていた。けれど、それは何か別のことを暗示してもいるようで、彼の心を酷くかき乱した。
 黙りこんでしまったジェイドを見て、ルークが怪訝そうな顔をした。
「ジェイド?」
「…いえ、何でもありません」
 ジェイドはごまかすように曖昧な笑みを浮かべ、それから物理学の知識のほとんどないルークに、どう講釈してやったものか、少し頭を悩ませる。どうせ夢の中なのだから適当に流してしまってもよかったはずだが、何故かそうすることは躊躇われた。
 言葉を選びながらひとつずつ、わかりやすいように噛み砕いていってやると、ルークはそのたびに小さく相槌を打った。
「同じ速さで、同じレールの上を、お互いの背を追いかけて走っているから、と言えばわかりやすいでしょうか」
 ジェイドがそう括ると、ルークは、なるほど、と頷いた。そしてふと気がついたように言う。
「それって何だか、俺とジェイドみたいだな」
 ジェイドは一瞬あっけにとられて、それから繕うように、ずれてもいない眼鏡を押し上げた。
「…ほう? どの辺りがですか?」
「だってそれってつまり、お互いにお互いの背中しか見えないんだろ?」
 ルークがあっさりとそう言い放ったので、ジェイドは少し不思議に思った。正直なところを言えば、ここで引き合いに出されるのは、自分ではなく彼のオリジナルだと思っていたからだ。
 そして同時に、すう、と自分の心が冷えていくのを、頭の隅で感じていた。
「…それは、どういう意味ですか」
「そのまんまの意味だよ」
 投げやりな口調で、真摯な目で、ルークは答えた。ジェイドが何か言おうとする前に、ルークのほうがすいと目を逸らした。窓の外の星明りが、彼の顔を青白く染めている。
 がたたん、がたたん、と列車が揺れる。ふと、ジェイドは何かの声を聞いたような気がした。それは呼び声のようでもあった。
 透明な窓硝子の向こうには、ちらちらと白く燃える星の火の川が、線路にそって細長く流れている。
「…うたが、」
 ルークが何事か、小さく呟いた。ジェイドがちらと彼のほうを見ると、ルークは相変わらず窓の外を熱心に眺めている。俯きがちの顔に、長い赤い髪がかかっているせいで、その表情がよく見えない。ジェイドは少し不安になった。そしてそれを何とか忘れようと頭の中で奮闘していると、唐突にルークが言った。
「ティアの歌が聴きたいな。結局、最後まで聴けたのは、たった一度だけだったから」
 ジェイドは、く、と苦笑するだけに留めておいた。
「残念ですねえ。ここに彼女がいなくて」
「うん。でもいいや、ジェイドが一緒だから」
 ルークはそう言って、静かに微笑んだ。とても幸福そうだった。だからジェイドは不思議に思ったが、何も訊かなかった。その代わり、できるだけ優しく聞こえるように、告げた。
「私も嬉しいですよ、ルーク。あなたと一緒にいられるのが」
 するとルークはとてもびっくりしたような顔になって、ついではにかんで笑った。
「ジェイドがそういうこと言うとは思わなかったな」
 ジェイドは曖昧に笑って、ルークのほうに手を伸ばした。ルークのみどりいろの目が、静かにジェイドの腕の動きを見つめていた。
 はじめて触れるルークの頬は、妙にひんやりしていた。けれど現実にそこにあるように錯覚するほど、しっかりとした感触を持っていた。
「ジェイドの手って、あったかいのな」
 感動したようにルークが言うので、ジェイドは呆れてこう答えた。
「あなたが冷たすぎるんですよ」
 ルークは、そうかもな、とどこかおかしそうな顔で同意した。ふと、そのまま、ルークの顔から表情が抜け落ちる。
「…どうかしましたか?」
 ルークの頬から手を離そうとすると、逆にルークに手をつかまれた。そのまま両手でそっと握られて、ジェイドは少し戸惑った。
「お前はどうしたら、幸せになってくれるんだろうなあ」
 本気で困ったように言うので、ジェイドはますます落ち着かなくなった。ルークが何を望んでいるのかさっぱりわからない。
「あなたに心配されなくても、私は十分幸せなつもりですよ」
 とりあえずすらすらと言葉を並べてみても、ルークの静かな瞳には全てが見透かされているようで、ジェイドは居心地が悪くなった。ルークの顔が悲しげに歪む。
 ふと、ジェイドは思いつきで言ってみた。
「私はあなたの隣にいたい。どうしたらそこに行けますか?」
 ルークの顔色が、変わった。



 ジェイドが目を開けると、そこには黒い外套を着た男がいた。やはりあれは夢だったのか。そう思って再び目を閉じかけて、はっとして目の前の男を見た。
「お、目が覚めたか」
 フードの中からこぼれる金髪。悪戯っぽい青色の瞳に、みっともないほど動揺しているジェイドの姿が映っていた。
「…陛下。何故あなたがこんなところに?」
 出来るだけ小さな声で尋ねると、ピオニーはからからと笑った。
「俺はもう陛下じゃない。元陛下だ」
「元、とは…まさか」
「お前の退役届けを受理した日に俺も皇帝を辞めた。なに、ブリジットならうまくやるさ」
 何と言ったって俺の子供だからな、そう豪快に笑った男に、ジェイドは久しぶりに頭痛を覚えた。
「それではピオニー。どうしてこんなところにいるんですか、まさかわざわざ私を追いかけてきたわけではないでしょうね?」
「当たらずとも遠からずだな」
 ピオニーは、懐から無骨なデザインのナイフを取り出した。それで全てを悟ったジェイドは、なるほど、と頷く。
「確かに、私が他国に亡命すれば、マルクトとしては厄介なことになるかもしれませんね」
「そういうことだ。でも普通の兵じゃおまえにはあっさりやられちまうだろうから、わざわざ親友兼元皇帝である俺が出向いてきてやったわけだ」
「ご苦労様です」
「大臣どもには泣かれたから、お忍びだがな。でも、今のお前なら殺さなくてもよさそうだから、安心した」
 ピオニーは満足げに言って、それから不思議そうな顔をした。
「しかし、お前一体どんな夢を見てたんだ? 普段あんな無表情まがいのお前が凄い百面相してて、面白かったけど気持ち悪かったぞ」
 ジェイドは、あまりの言われように微苦笑を浮かべた。けれどもっともなのであえて言い返すこともしない。
「夢の中で列車に乗って、ルークに会いましたよ。彼のところに行きたいといったら殴られたので、もしかしたら夢じゃなかったのかもしれませんが」
「…何でだ?」
 ピオニーが興味深そうに訊いてきたので、ジェイドは笑顔で答えた。
「私の頭の中のルークなら、ごめんそれは出来ない、といってすまなさそうな顔をするからですよ。本物でもなければ、人の答えを聞くなり左ストレートをきめて、怒鳴ってきたりはしないでしょう?」
 夢には自分の願望が出るといいますし、とジェイドがうそぶくと、ピオニーは脱力して列車の窓に寄りかかった。おまえってやつは、と呆れたように言うので、ジェイドはくつくつとのどの奥で笑う。するとピオニーが少し驚いたような顔をしたので、ジェイドはまたおかしくなった。
 しばらくすると、コンパートメントの外から、乗務員が次の駅への到着が近いことを告げる声が聞こえてきた。ざわざわと外が煩くなる。
「お前はどこに行くんだ?」
 ピオニーがそう尋ねてきたので、ジェイドはさあ、と素直に返した。
「そういうあなたはどこまで?」
「俺は次で降りる。流石に全部放りだしてくるほど、俺はひとでなしじゃないからな」
 どこかの誰かさんと違って、と嫌味交じりにピオニーは笑った。ジェイドは、確かに、と笑い返して、それから窓の外を眺めた。
 一面に広がる荒野。そのどこかを、いつか彼らと共に歩いた。
「私を処分しなくていいんですか?」
 何となくそう訊いてみると、ピオニーは大して面白くもなさそうに答えた。
「自分の後始末くらい自分でしろよ。もういい大人だろうが」
 ジェイドはくすりと笑った。列車の速度が落ち、駅が近づく。立ち上がりかけたピオニーに、ジェイドは声をかけた。
「なあ、ピオニー。私は間違っていたと思うか?」
 ピオニーはしばらくジェイドをじっと見て、それから答えた。
「誰も正しくなんかなかった。けれど、俺たちは生きている」
 二人は視線を交わして、どちらともなく微笑んだ。正しい別れの挨拶だった。
「じゃあな、親友」
 ピオニーが去っていって、ジェイドはまた一人になった。列車が動き出し、パステルがかった風景が流れていく。
 ジェイドは息を吐いて、目を閉じた。夢とも現実ともつかない幻想の列車の中で、ぼろぼろ泣きながら自分を殴った青年のことを想った。
 ルーク。口の中で、とびきりの呪文のように、いとおしさをこめて呟く。
 私はあなたを幸せにしてあげたかった。私が幸せになるために、あなたを幸せにしてあげたかった。
 ティアはもう歌わない。ナタリアは決して泣かなくなった。アッシュは表情を失くし、ガイはいなくなってしまった。アニスは命を奪われてしまった。
 それでも私はまだここにいる。
 世界中の誰もを幸せにする。そう言った彼の台詞を、陳腐で冗談めいた、まるでおとぎ話のようだと、最初にジェイドは思った。彼自身すら幸せになれないのに、一体どうやってそれを実行するつもりなのかと、心の中で呟いたこともあった。
 でも今は、少しその気持ちがわかる気がする。
 いや、本当は全く違うのだろう。あの頃の彼の気持ちを理解することは、きっと誰にも出来ない。いなくなってしまった人間の気持ちを推測するなんて、それこそ死者への冒涜だ。
 けれど、その願いを叶えてみるのも、きっと悪くない。軍属であることをやめたジェイドには、けれども時間だけはあった。
 彼は口元にゆったりとした笑みを浮かべた。
「…まあ、私なりに、努力はしますよ。だから今度逢えたときには、突然殴りかかって来るような真似はしないでくださいね、ルーク」


「カムパネルラ、またぼくたちふたりきりになったねえ、どこまでもどこまでもいっしょに行こう。ぼくはもうあのさそりのようにほんとうにみんなのしあわせのためならばぼくのからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」
「うん。ぼくだってそうだ。」
 カムパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体なんだろう。」
 ―宮澤賢治 「銀河鉄道の夜」より―



2006/11/13 ジェイルク

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